音円盤アーカイブス(2005年11月)

BRUCE DUDLEY
実はこのCD9月にSHOPで輸入盤CDを扱いだした時に、入荷と同時にレビューしようと思っていたのだが、瞬く間に完売してしまいそのままになってしまっていた。
その後も追加注文のたびに完売の繰り返しで、今回いつもより多めに入荷するので、このときとばかりここで紹介する次第。
BRUCE DUDLEYはテネシー州ナッシュビルのピアニストで、この作品は1995年にリリースしたファーストアルバムとなる。
今回ちゃんと聴いてみて売れる理由が良く分かった。
ファミリアなのである。ナッシュビルと言えば幅を利かせているのは大半がカントリーアンドウェスタンであって、きっとジャズは残りの何割かのさらに数%の部分でひっそりと演奏されていると思うのだけれど、さすがアメリカの大地に根づいているジャズ文化の底力を見せてもらったような気がする。
テネシーというジャズの中心からは結構外れている土地柄でも、ローカルにはローカルならではの素晴らしいジャズ文化が育ってしっかりと基盤を築いている。
ジャズにおいても、有名ブランドや高級品ばかりが素晴らしいんじゃないことを、身をもって知らしめる作品と言ったら良いだろうか?
深夜、バーボン片手にいつもより少し大きめの音量でBRUCE DUDLEYの演奏を是非聴いてみて欲しい。
ジャズも等身大よりちょつと背伸びしたこのくらいの演奏が丁度いいのである。
さあ、もう一杯バーボンをお替りしよう。
メンバーはBRUCE DUDLEY(P)SEBATIAN WHITTAKER(DS)DAVID CRAIG(B) JOE FERREIRA(DS)ERIC LATE(B)BOBO CHADWICK(FL)
録音は1995年7月21‐23日  FRANKLIN,TENNESSEE
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ANTONIO ARNEDOO
2001年の初め、廃刊になった「OUT THERE」誌に座間裕子さんが、NYレポートを連載されていて、それは、NYの最前線の音楽を現場から伝える実に読み応えのあるレポートであった事を思い出す。そのレポートの中で、このANTONIO ARNEDOのレコーデイングの状況を伝えていた。
その文章を読んで以来、ずっとANTONIO ARNEDOのことが気になっていたのだけれど
どこのショップにも置いてなかったし、JAZZ媒体でもそれ以来ANTONIO ARNEDOの名前を見つける事はなった。
それが、こうして私がARNEDOのCDを販売することになろうとは何か因果めいたものを感じる。
アルネドの音楽はどう表現すればよいのだろう?
スペイシーでありながら、躍動感にも富んでいて色彩感も豊か、寡黙なようで饒舌、牧歌的なのに都会的、相反する要素が同居する不思議な空間。
そして時間がゆっくりと流れていき、揺らいでいると言っても観念的で分からないだろうけど、とにかくそのような印象を受けるのだ。
アルネドのパッショネートなソプラノやベン・モンダーのスペースを生かしたギター等、個々のプレイも素晴らしいのだけれど、あまりそういう細々したことには触れたくない、音楽全体に身をまかせたいようなジャズだ。
NYブルックリン派やFSNTを追いかけているファンの方には是非聴いてもらいたい一作です。
メンバーはANTONIO ARNEDO(SAX,FL,P)BEN MONDER(G)STOSHI TAKEISHI(PER)
CHRIS DALHGREN(B)JAIRO MORENO(B)BRUCE SANDERS(TIPLE)
録音は2000年10月16日  SYSTEM TWO  BLOOKLYN, NYC
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TED GIOIA
幻本掲載の1957年ロス生まれのピアニスト、TED GIOIAが1986年に録音したデビュー作品。
この本に掲載されなかったらおそらく、多くの方々に聴かれることなく埋もれて知ったままだっただろう。
ジャケットの風景画がとてもいい。
朝なのか、昼なのか、私には冬のよく晴れ渡った午後のまだ造成途中のところが残っている郊外の新興住宅地の穏やかな風景に見える。
そうそう、時間がゆっくりと流れているスローライフのイメージ。

そんなイメージがTED GIOIAのプレイにぴったりとあてはまる。
決してやわなピアノではなくて、結構硬質なタッチの表現でグイグイと引っ張る部分と水彩画のような淡いタッチで繊細に表現する部分を巧みに使い分けプロフェッショナルな演奏を披露。
一貫して流れているのは清涼感、爽やかさである。
あまり、ブルースの要素は感じられない。
澤野のピアノトリオシリーズのファンに方には喜ばれそうな一作です。
ドラムのサクサク感、シュワシュワ感もとってもいい感じです。
メンバーはTED GIOIA(P)JEFF CARNEY(B)EDDIE MOORE(DS)
録音は1986年6月9-11日  
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MARY LOUISE KNUTSON
ミネソタ州というと片田舎の感じがするけれども、彼女MARY LOUISE KNUTSONは洗練された都会的なピアノを弾く。
日本で言えば、さしづめ木住野佳子といったところか?
2005年のメリー・ルー・ウィリアムス・ピアノ・コンペティションのファイナリストにも選ばれたようでなかなかの実力派のようだ。
実は昨日、彼女から「お買い上げありがとう」のサンクスメールがきたのですね。
これで俄然私の中での彼女の株が上昇、紹介が早まった次第。
ミネアポリスを主な活動場所にしていて、今までにDizzy Gillespie, Bobby McFerrin, Richie Cole, Von Freeman, Greg Abate, Dianne Reeves, Billy Hart, Richard Davis と共演した経歴がある。
「TANGERINE」「ON GREEN DOLPHIN STREET」と1、2曲目のスタンダードの料理の仕上がりは上々。女性らしい細やかな感情表現にきびきびした運指のアクション技が繰り出され実力の片鱗を見せつける。
4曲目オリジナルの「MERIDIAN」、いい曲です。
晴れ渡った海をクルーズしているような、爽やかで華やいだ感じの美メロナンバー、このアルバムの一等賞だと思う。
エレベ使用の曲もあるけれども、彼女のオリジナル作品のポップ性を引き出す点においてマイナス要因にはなっていない。
彼女の音楽は、通は通で納得させるものがあるし、日頃ジャズに縁がない人にも受け入れられるポップ性が強みだと思う。
メンバーはMARY LOUISE KNUTSON(P)GORDON JOHNSON(B,EL-B)PHIL HY,MARC RIO,SRAIG HARA(DS)MARC ANDERSON(PER)
2001年作品
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ALEX LEVIN
このアルバム、昨日入荷したばかりで早速とばかり深夜の試聴を開始。終了後眠りにつき、朝パソコンのスイッチをいれたらなんとALEX LEVINからサンクスメールが届いていた。
嘘のようなタイミングだけど、本当の事。
アレキサンダー・レヴィン、ブルックリンと最後に記されていた。
裏のジャケットに顔写真が載っているけどまだ30歳いってないだろう。
いままでNYの小さなクラブでひたすら研鑚を積み、ようやくデビューアルバムの発表にこぎつけた今からの人材。
自費制作であろう事はレーベル名がないことからも直ぐに分かる。
CD番号さえ記入されていないのだ。
そしてこのアルバム、試聴してもらえば、直ぐに分かってもらえると思うのだけど、凄く良いです。
押し付けがましいところは全然なくて、ALEX LEVIN自身このアルバムを食事時、リラックスタイムに、読書しながら、料理しながら1日を通して楽しんでもらえば嬉しいというコンセプトのもとに録音したらしい。
こうかくと、流し聴きのイージーリスニングジャズかと馬鹿にされそうだけど、そうじゃないのです。
細やかなタッチ、そこはかとない詩情溢れる感情表現にもたけている傍ら、隠しようの無いジャズ心、ジャズ愛が湧き出ていて嬉しくなる。
「IF I SHOUD LOOSE YOU」「AUTUMN IN NY」「BUT NOT FOR ME」スタンダードはウディ・アレンの映画や最近のものでは「ターミナル」のバックで流れいてもよさそうな雰囲気、粋で洒落ていてペーソスが感じられるのだ。
オリジナルも素晴らしく澤野のピアノトリオがお好きな方にはうってつけのナンバーが続く。
ラストはなんとビョークの「NEW WORLD」。
素通りするには勿体無い、ニューヨークの新人ピアニストのデビューアルバム。
応援していきたいと思う。
メンバーはALEX LEVIN(P)DIALLO HOUSE(B)IAMAIL LAWAL(DS)TAYLOR DAVIS(B)
YOSHI WAKTI(DS)
2005年作品
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BOB HIMMELBERGER
昨日のALEX LEVINと一緒に入荷したCDで、ジャケットデザインがおよそ日本人好みじゃなく、正直言ってあまり期待もせずに聴いてみた。
これが、ALEX盤に勝るとも劣らぬ作品でびっくり。
実際、世界中にその土地、土地にジャズミュージシャンがいて、CD時代になってから録音、リリースがアナログ時代に比べて容易になったことを抜きにしても今、驚くぐらいの新録がリリースされている。
その中のごく一部なのである。日本に入ってきて店頭に並ぶのは・・・
さらに、その一部がジャズ媒体で紹介されているに過ぎないわけで、聴かないまま埋もれてしまう素晴らしい作品が一体全体どのくらいあるのだろう?
もうすぐオーストラリアの日本未紹介レーベルのCD群が入荷予定だけど、昨日、もう2社魅力的なレーベルを発見。これからアプローチをかけようと思っている。
そして、ALEX LEVINやこのBOB HIMMELBERGERのような自費制作の作品に骨のある
リアルなジャズが演奏されているものが多くて実際自分で色々輸入してみてその水準の高さに驚いている。
録音もLP時代と違って全く遜色ないものが多いし、このHIMMELBERGER盤などオーディオマニアの方にも聴いてもらいたいほど音が良い。
唯一、ダメなのがジャケットデザイン。何故これほど購買意欲をそぐようなデザインにしたのかと思うほど悪趣味なものが多い。
昨日追加分を発注したけど、数が少なかったのを後悔している。
すでに入荷待ちになっているようなので、再々入荷は暫らくかかるかもしれない。
肝心の内容のことについて全然書いていなかった。
聴いてもらえば分かると思うけど、BOBはテクニシャンタイプのピアニストで、勢いが感じられる素晴らしい才能のピアニスト。
自作も良くて、スタンダードやジャズマンオリジナルの解釈にも独自の工夫が感じられる。
ドラムとベースもこういうマイナー作品はちょっとリズム的に弱いものもあるのだけれど、本作は全く問題なし。
ヨーロピアンピアノトリオもいいのだけれど、こういう朝からしゃきっとした気分にさせてくれる爽快、痛快ピアノトリオもやっぱりいいですねぇ!
マイナーピアノトリオの時代はまだまだ続くのであります。
メンバーはBOB HIMMELBERGER(P)PETE MACDONALD (DS) DAVE RICHARDS(B)
2000年作品  
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YAYOI IKAWA/COLOR OF DREAMS
この作品9月初めくらいに紹介しようと思っていたのが、先延ばしになってしまい遅れていた。
売れ行きも好調のようで現在入荷待ちの店が多いみたいだ。
井川弥生、東京生まれの彼女、実は2004年クラウンレコードからファーストアルバムをリリースしている。
この作品はセルフプロデュースによる自費制作盤で、5年に及ぶ自身の音楽探求から習得したものを残したいという意図から生み出されたもの。
スイングするピアノではありません。叙情的なヨーロピアンライクな表現も皆無です。疾走するような早弾きもそんなにはない。
ピアノトリオファンが一般的に好む要素はあまりこのアルバムには見当たりません。
しかし、ここには驚くほどオリジナリティー溢れた音楽が展開されています。
井川自身のノートにも記されているけど、「喜び」「悲しみ」「愛」「情熱」「平和への願い」・・・普遍的な感情を表現したかったそうだ。
レジー・ワークマンが最も強い音楽的影響を受けた師匠であるらしい。
と言う事はその先にコルトレーンの存在が意識されるわけで、通りで井川の音楽は一音一音、音の等価が高いというか重みのあるエモーショナルな音楽が展開されているわけだ。
レジー・ワークマンつながりでマリリン・クリスペルや感情表現の方法がジェリ・アレン、捻じれ具合がポール・ブレイを彷彿させるところがあって非常に個性的な自身のボイスを持っているミュージシャンだと思う。
こんな風に書くとさも小難しい音楽に誤解されそうだけど、そんな事は全然なくてヒューマニティー溢れる力強い音楽が展開されています。
メンバーはYAYOI IGAWA(P)TYSHAWN SORY(DS)JIM ROBERTSON(B)
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JEFF FELDSTEIN
昨日は、月1回の研究会(飲み会?)でN山さんがお見えになった。
そのときに「これっ、結構いいでねーの!」と盛り上がったのがこのJEFF FELDSTEIN。
最近ジャズギターであまりいいもの聴いていないなぁと感じている方がいらっしゃったら是非このアルバムを一度耳にしてもらいたいです。
全10曲が、トリオ、ないしはピアノを加えたカルテットで演奏されており、内容もストレートアヘッドなものなので、万人に好まれる内容だと思う。
特筆すべきは、ドラムを4曲、COLIN BAILEYが担当していること。
JEFF FELDSTEINのHPに顔写真が載っていたけど、スティーブ・スワローをもう少し老けさせたようなおじいさんだった。
でも、ドラムの切れ味は鋭い。
そして、リーダーのJEFF FELDSTEIN!
何故、彼のようなプレイヤーがほとんど名前を知られないまま現在に至るのか理解に苦しむ。
音楽的バックボーンの多くはパット・マルティーノに負うところが多いと思われるが、パットに比べFELDSTEINのほうが、もっと柔軟でおおらかな感じがする。
マルティーノのある意味(特に全盛期)神経質で偏執狂的なイメージのする鬼気迫ったプレイにくらべてずっとフレンドリーで親しみやすい。
このFELDSTEINも3日ほど前、サンクスメールをくれて、このアルバムを気に入ってくれた?どの曲が一番気に入った?とか色々質問が書かれていた。
実際アルバムには様々なタイプの曲が収録されているが、私のお薦めはズバリ、1曲目。
ほんといい曲だと思うし、FELDSTEINのソロワークも素晴らしいと思う。
メンバーはJEFF FELDSTEIN(G)COLIN BAILEY(DS)BRYAN NcCONNELL(B)TERRY RODRIGUEZ(P)DANNY SPENCER(DS)JACK GATES(G)2曲目のみ
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MATTIAS CARLSON
このアルバムカヴァーを見て、「ははーん!」と思う方が多いんじゃないだろうか?
そう、そうなんです。コルトレーンの初リーダーアルバムのデザインをパクッタものなのです。
MATTIAS CARLSONは、1972年生まれと言う事だけで、CDにも、HPにもあまり詳ししバイオグラフィーが書かれていないのでどういう経歴の持ち主なのか良く分からない。
最初はドラムから音楽に入り、トロンボーンのあとサックスをはじめたらしい。
北欧のミュージシャンの多くがそうであるように、音楽学校に入学し、ジャズオーケストラで活躍。ニルス・ランドグレンやデイブ・リーブマンとの共演歴があるようだ。
MATTIAS CARLSONのサックスはブルックリン派の面々や同じ北欧の同世代テナー奏者に比べれば、オーソドックスなスタイルだと言えよう。
テナーの音に比べバックの音がMOSELOBIEレーベルに代表される爆音系のスタイルなのでその辺のミスマッチ感を面白いと捕らえるかどうかで評価が変わってくるかもしれない。
8曲目「THE MOST BEAUTIIFUL EYES」は、いい曲です。
テナー奏者としての実力を発揮したバラードナンバーじゃないかな?
最後に書き忘れたけどこのアルバム、ライブアルバムです。
聴衆の拍手ではじめてそれと気付くほど、録音も良いです。
メンバーはMATTIAS CARLSON(TS,SS)KRISTER JONSSON(G)MATTIAS HJORT(B)
ANTON JARL(DS)
録音は2003年6月1日  MALMO ,SWEDEN
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CECILIA COLEMAN
レア本掲載の一作で、現在はNY在住のセシリア・コールマンが1994年にリリースしたクインテット作品。
さすが、本に掲載されだけあって、一本筋の通った快適なLAハードバップが鳴り響いてる。
フロントのANDY SUZUKIとSTEVE HUFFSTETERがセシリアの曲の意図を良く理解した素晴らしいプレイをしていると思う。
SUZUKIのテナーは昔のマイケル・ブレッカーのテナーサウンドにそっくりで、オリジナリティーの部分では問題があるかもしれないがそれは置いといて、聴きごたえのあるプレイだと思う。
HUSTETERは以前秋吉敏子オーケストラで、ボビー・シューと並んでリードトランペッターを務めていたが、こういうコンボでの演奏は久しぶりに耳にした。
SUZUKIとHUFFSTETERのチームは数年前紹介されたTHE NAIROBI TRIOの一作目でもフロントを務めているが、ピアノトリオの違いでサウンドが全然違っていて聞き比べると面白いかも知れない。
セシリア・コールマンは有能な作曲家でもあるが、1曲目や4曲目が個人的には気に入っています。
もともと端正なピアノを弾く演奏家なので、ピアノトリオ作品も悪くは無いのだけどこういったクインテット編成のほうがセシリアの音楽性に合っているように思う。
この作品以外にもクインテット作品はあるので、また別の機会に紹介したいと思う。
いずれにしても、持っていればジャズライフが必ず充実する作品だと思う。
メンバーはCECILIA COLEMAN(P)STEVE HUFFSTETER(TP,FLH)ANDY SUZUKI(TS)DEAN TABA(B)KENDALL KAY(DS)
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JINGA QUINTET
今から2年くらい前にFSNTからリリースされたAVISHAI COHENのトリオ作品が非常に話題になってトランペットのトリオ作品ということもあって興味津々、私もすぐに手に入れた。
最初はベーシストのアヴィシャイ・コーエンがトランペットも吹いているのかという情報も飛びかったのですが、まったく別人と言う事が判明。
実際、ここ最近耳にしたことの無い思い切りのよいAVISHAIのぶちかましプレイは輸入盤ファンの間で新風を巻き起こしたことは記憶に新しい。
このアルバムはそのAVISHAIが参加している2002年に録音されたクインテット作品でリーダーはベーシストのFERNANDO HUERGOが務めている。
ニュータレントのほうではなく、フレッシュサウンドワールドジャズのほうからリリースされている。
サックスはこれまた伸び盛りのMIGUEL ZENON,ピアノはLUIS PERDOMOで彼らのソロが存分聴けることがこのアルバムの大きな魅力のひとつになっている。
THE JINGA QUINTETはFERNANDO HUERGOがその前身でやっていたJINGA TRIOの発展形、拡大バージョンとも取れるわけだけど、私自身は少しちがうと思っている。
TRIOのサウンドがHUERGOのディレクションの度合いが高い音楽としたら、こちらのクインテットサウンドはソロイストの自主性に任せたより自由度の高い制約の少ない音楽だと思うのだ。
そのために、AVISHAIはじめ有能なソリストを起用したのだろう。
アルゼンチン発の現代NYサウンドに負けない、力強くエキゾチズム溢れる自由な世界標準のジャズにしあがっていると思う。
メンバーはAVISHAI E.COHEN(TP)MIGUEL ZENON(AS)LUIS PERDOMO(P)FERNANDO HUERGO(ELB)STEVE LANGONE(DS)
2002年5月3日、12月6日
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大森明
私が一番日本のアルトサックスプレイヤーのなかで好きな大森 明さんの初リーダー作で、1983年の冬に発売された。(と思う。)
初めてこのアルバムを聴いたのは記憶に間違いが無かったら、阪急電車の中でK原君がカセットテープに録音したものをウォークマンか何かで聴かせて貰ったはず。
ちょうど一年ほど前にも大森さんの第2作目をブログで取り上げたので重複することを書くのはやめますが、とにかくアルトサックスの音に一発でやられてしまったのであります。
と言いつつまた書きますが、私にとって大森さんの音はまさに理想とするアルトサックスの音なのである。
飾り立てることなしにしっかりと前を向いた音、そこはかとない情緒をかもし出しつつそこには凛とした自己主張がしっかりと込められている音と言えば良いだろうか?
これ見よがしのオーバーな表現はせずに、自分の肉声で喋っているところ。
バックの大物連中にペースを乱すこともなく、逆にレコーディング中にミュージシャン同士のシンパシーが芽生えフレンドリーになっていき音楽がどんどん膨らんでいくのが感じられる。
いつも音のことばかり書いてしまうけど、アドリブも凄い。
大森明のアドリブはまさにバリー・ハリスと同じ様なネイティブなビバップの言葉づかいであり、自然と溶け込んでしまっていて浮いているところが一切ないのだ。
こういう日本人+アメリカのサイドメンの企画ものは、どこかしらに浮いたちぐはぐな部分が感じられるのだけれどそういう部分が全然ないのです。
これこそ、アメリカでの研鑚の賜物と、大森自身の天性のジャズマンとしての才能なのだと思う。
メンバーは大森 明(AS)BARRY HARRIS(P)RON CARTER(B)LEROY WILLIAMS(DS)
録音は1983年2月10,11日  VANGURD STUDIOS, NYC
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AGE GARCIA
AGE GRACIAはブラジル出身のピアニスト。
この作品は2002年フロリダのGOLDEN DOME RECORDSという会社からリリースされた。
AGEのスタイルは一聴ビル・エバンスとブラジルのユニークな音楽家エグベルト・ギスモンティの影響を受けているように感じるが、勿論それだけに留まらないサムシンエルスを持っているプレイヤーだと思う。
ブラジルの音楽家は、ジャンルをいとわず素の部分で、サウダージ感覚を持ち合わせていると言われているが、それはこのAGE GARCIAにもあてはまる。
柔らかなタッチから生み出される、スローフードならぬスローミュージックは、聴いていて清々しい気持ちと同時にどこか懐かしい気分になる。
テクニック的なものや、ジャズ的なスリルを期待する面にはもの足りないと思われるけれども、本人の指向している音楽の方向性がまったく違うのでお門違いというものだろう。
二度、三度聴き重ねていくうちに、だんだんとこのアルバムのよさが分かってくるんじゃないかと思う。
ジャズ耳で聴くよりも、音楽耳で聴いた方が良さが早く分かるピアノトリオ作品だと思う。
AGE GARCIA(P)DAVID WERTMAN(B)NEAL BACKMAN(DS)
2002年作品
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WILLIE MYETTE
WILLIE MYETTEが1998年の自費制作でリリースしたピアノトリオ作品。
バークリー音楽大学を卒業後、RHODE ISLANDで活躍していて、JAZZ KIDSという最年少6歳くらいの子供にジャズを教え、演奏する活動を自身のアイデアで活動を続けているらしい。
師匠はあのFRED HERSHで、2人のスタイルは微妙に異なる。
ジャケットは自費制作らしく、面白みのない顔写真だけのデザインだけど、演奏の内容は結構いいのですね、これが。
いたってストレートに快適にスイングしていくトリオマナーに、オッド・オブライエンを連想してしまったと言えば、私の買いかぶりだろうか?
いやいや、実際聴き進んでいけば分かるのだけど、選曲、テンポの設定、アレンジなど飽きがこないよう巧みに工夫がしてあって、それがわざとらしさを感じさせずに自然な感じでながれていくものだから安心してトリオサウンドに身をまかすことができるのです。
全9曲中唯一のオリジナル曲、娘さんに捧げた可愛らしいワルツ曲でこれが、中々の佳曲だったので、もう少しオリジナル曲を増やしても良かったのではないかと思う。
5曲目「THE NIGHT WE CALLED IT A DAY」、スローからミディアムで演奏されるのが普通のこの曲を予想外のアップテンポでプレイ。
これも意外性のテンポ設定の勝利でしょうね。グッドです。
ラストはオスカー・ピーターソンの「HYMN TO FREEDAM」。
さっきのJAZZ KIDSがコーラスの登場だ。
これは個人的に頂けないけど、こんなところが自費制作らしくていいのでないかとも同時に思う。
ピアノトリオファンならば、持っていても良い作品だと思う。
メンバーはWILLIE MYETTE(P)MARK CARKLSEN(B)JACK MENNA(DS)
録音は1998年10月26日
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NATE BIRKEY
サンタ・バーバラに住むNATE BIRKEYの2001年リリース作品で、第4作目のようだ。
最近白人のハードバッピッシュなトランペッターで、新たな人材はなかなか出てこなかっただけにこれは嬉しい発見。
この作品と同時に「BALLADS」というスタンダード中心の作品も同時にリリースしていて、そちらの方も入荷予定なので、楽しみです。
先に入ったこのアルバムの方はオリジナル中心のアルバムなので、NATE BIRKEYとそのレギュラークインテットの音楽性がより明瞭に伝わるかも知れない。
雰囲気としては、パシフィックジャズのチェット・ベイカー&クリューやプレスティッジの連作ものっていうところか?
ミュートを吹けば、マイルスにも少し似ているかな。
作曲も親しみのもてる佳曲揃いで、このアルバムは50年代ハードバップファンの方に喜ばれるのではないかと思っています。
快適な4ビートナンバーにラテン曲、叙情感溢れたバラードナンバーを織り交ぜてエンターテイメント性豊かな作品となっている。
4曲目のビタースイートなバラード吹奏、5曲目の気合の入ったアドリブを聴くとやはり、アメリカのジャズはまだまだ捨てたもんじゃないと思う。
9曲目だけは、マイルスの作風でいえば、プレスティッジの時代からいきなりマイルス・イン・ザ・スカイに飛んじゃったという感じで作品としての統一感にはいささか欠けるかもしれない。
ラストはボーカルで「WHAT'LL I DO」。
うん、ちょっとヘタウマ感はあるけど、チェットに似ている。
メンバーはNATE BIRKEY(TP,VO)JUSTIN CLAVERIA(TS)JAMIESON TROTTER(P)
JIM CONNOLLY8B)COUGAR ESTRADA(DS,PER)
録音は2001年2月  SANTA BARBARA , CA
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DANIELA SCHACHTER
まず、1曲目「DEAR WAYNE」を聴いてみて欲しい。
彼女の生まれ故郷イタリアには、スプマンテというスパークリングワインがあるけど、その発泡性のように爽やかで、しかも飲み口は美味なテイストを残すところがイメージ的によく似ている。WATER SMITH三世は、滑らかで、倍音成分に富んだなかなか良い音のテナーを吹く。
彼女DANIELAは、バークリー音楽院を卒業後、様々なコンペティションで賞を受け、今までにthe Clayton-Hamilton Jazz Orchestra, John Dankworth, the New York Voices, Terri Lyne Carrington, Patti Austin, Regina Carter, Harry Skoler, Christian McBride, Bruce Gertz, Ingred Jenson, Tiger Okoshi, Shirley Horne, Al McKibbonらと共演した経歴の持ち主。
ピアノと作曲のバランスがとても良い女性アーティストで、第二のイリアーヌのような存在になる可能性大であります。
DANIELAは、このアルバムでボーカルも披露しているが、「EASY TO LOVE」のようなスタンダードを普通に唄うぶんには、ピアニストの余技程度のものでむしろ、3曲目「SICILIA」のようにボイス的な使い方の方がしっくりくると思う。
ギターが同じSCHACTHERの姓なので、旦那なのでしょうか?
アルバムはWAYNE SHORTERに捧げられていて、ショーターと彼女の音楽は違うものだけども、どちらも夢を感じさせるところは共通している。
現在、ボストンとNYで活動しているようで、注目していきたいプレイヤーです。
メンバーはDANIELA SCHACHTER(P,VO)DAVIDE SCHACHTER(G)WALTER SMITH 3世(TS,SS)MARCO PANASCLA(B)HARRY TANSCHEK(DS)
録音は2001年8月30日
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TZBOGUCHI
N山さんが先週の研究会の時に持って来てくれた1枚。
ここ最近、SHOPの方で販売するCDをずっと取り上げていて、こういうサウンドは久しく聴いていなかったので非常に新鮮に感じる。
2004年坪口の単独プロジェクトで進められたレコーディングは東京ザヴィヌルバッハとは、大分違ったよりジャズっぽい肉体運動性の強いセッションになっていて、
私のようなウェザーリポート世代にとって、とてもしっくりと体に馴染む音作りとなっている。
HORACIO HERNANDEZはじめとするNY在住キューバミュージシャンのレベルの高さにびっくりした。
リズムがいいのはもちろんのこと、今回の血となり肉となる部分を担当しているフロント陣の音楽性のレベルの高さに。
YOSVANY TERRY CABRERAは数日前買った江藤良人の新作で竹内直とツーテナーで絡んでいて結構いいなぁと思っていたのだけれど、この作品でのソロを聴いて一挙にファンになってしまいました。
25歳のトランペッターMICHEAL RODORIGUEZは2曲だけの参加だけど、ラテンだけではないジャズ心を持ち合わせている新たなる才能かもしれない。
一度ワンホーンでのフォービートセッションを聴いてみたい。
多分、結構やるんじゃないかと思うのです。
とにかく、この作品、クロスオーバー~フュージョン黎明期に育った私のような世代にとってしっくりといき、と同時に現代的なカッコよさも味わえる二度美味しい作品だと思う。
メンバーはMASAYASU TZBOGUTI(FENDER RHODES,P,HAMMOMDXB2,KEY)YOSVANY TERRY CABRERA(TS,SS)MICHAEL RODORIGUEZ(TP)CHARLES FLORES(ELB,B)PEDRO MARTINEZ(CONGAS,PER)HORACIO"EL NEGRO"HERNANDEZ(DS)
録音は2004年8月13,14,15日  NYC
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GAL COSTA
ガル・コスタの最新作で、これもN山さんが、タイミングよく持って来てくれたCD。
前日このガルの新作と江藤良人のCDをタワーレコードでピックアップしたのはよいがあいにく一枚分の持ち合わせしかなくて、泣く泣くガルのCDを棚に戻したばかりだったのです。
聞けば、還暦を迎えたというではありませんか?
これが、ほんとに60歳の声なのか?
初めて聴いたカエターノ・ヴェローゾ「ドミンゴ」のコラソン・ヴァガブンドゥの声と、今の声は違うけれども、その透きとおるような無垢な声自体はずっと維持されている。そして歳を重ねるごとにその豊饒性は年々増していくのだ。

数年前、大晦日のTVで、ブラジルの年越しが紹介されて、そのときにガルが「ブラジルの水彩画」を唄っている姿が中継された。数万人いやもっと多いか?の聴衆が一緒に大合唱している姿は感動以外のなにものでもなかった。
この人本当にブラジルの人々に愛されている存在なのだなとその時に感じた。
TRAMA移籍第1作目の本作は、近作の中でも特筆できるクオリティーをもった長年の愛聴盤になりそうな出来で、最高です。
アルバムジャケットには、佇むガルの姿がデザインされているけど、早朝なのか夕方なのか?
答えはガルのHPに隠されている。
2005年作品
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江藤良人
一昨日、昨日のブログと流れが続くのでありますが、本日は江藤良人の新作。
エルビン・ジョーンズに捧げられた作品で、エルビンの代表作の1枚「ライトハウス」と同じツーテナーの編成。
曲も「THREE CARD MOLLY」やDAVE LIEBMAN「NEW BREED」、ジーン・パーラ、サド・ジョーンズと続けば買わずにはいられません。
江藤良人のドラムをはじめて聴いたのは、1999年3月にN山さんが主催された綾戸智絵のコンサートであった。
今思うと、TOKOさんの病状がすでにひどくて、替わりに江藤がツアーで同行していたのかも知れない。
初めて聴く江藤のドラムは、動物的な勘に優れた野性味溢れるタイコであった。
同時に繊細さももちあわせており、噂通り素晴らしいドラマーであることに嬉しくなり途中休憩の間、トイレでN内さんに話し掛けたのを覚えている。
江藤のドラムはセコセコしていず、大きく唄っているところがずば抜けている。
要は筋肉の量なんだと思う。肉体的なポテンシャルが高いのでエルヴィンやフィリー・ジョーと同じ様なザックリ感というか、ダイナミクスが出せるのだと思う。
ドラムという楽器、ボーカルと並んで練習だけでは超えることの出来ない天性の素質が最も必要な楽器だと思うのですが、その意味において江藤良人は非常に恵まれた存在だと思う。
YOSAVANY TERRY CABRERAと竹内直のサックス、井上陽介のソリッドなベースワークももちろん良くて、これからの愛聴盤になりそうな一枚。
そして、なによりも江藤のドラム捌きが存分に味わえる作品になったことが良かったと思う。
イーストワークスさん、綾戸さんのCDで儲けまくってこれからも、こういう良質な日本のジャズをどんどんリリースしていって下さい。
「BOZO」の新作も早く買わなくっちゃ!
メンバーは江藤良人(DS)YOSVANY TERRY CABRERA(SAX)竹内直(SAX,FL)井上陽介(B)PEDRO MARTINEZ(CONGA)
2005年3月3,4日
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GARRISON FEWELL
GARRISON FEWELL のギターを初めて耳にしたのは、2001年にリリースされた「CITY OF SCAPES」だったように思う。SPLASC(H)からリリースされている作品が多いので、イタリア在住だと思っていたらボストンで活躍しているみたいです。
このアルバムもSPLASC(H)2003年作品で、2001年盤と同じ様にGEORGE CABLESが参加している。「CITY OF SCAPES」に参加していたサックスのTINO TRACANNAが抜けてギターカルテットの編成なので、FEWELLのアドリブソロがより多く楽しめるようになっている。
GARRISON FEWELLの自作バラードナンバーがオープナーで、意表をつかれる。
普通だったら、アップテンポの軽快な4ビートナンバーで幕開けだと思うのですが、
最初から流れゆく雲を見やるような、リラックスムード。
でも、いい曲でFEWELLのプレイも甘さに流されないビターテイストな叙情感を演出した素晴らしいソロでなかなか良いです。
2曲目と8曲目がBILLY STRAYHORN「JOHNNY COME LATELY」「LOTUS BLOSSOM」、
あとはスタンダードナンバーと自身とメンバーのオリジナルという構成になっている。
曲の配分の仕方がとてもいい塩梅で、鑑賞にも気が散らず身が入るように構成されている。肝心の演奏がしっかりしているから言えることなんでしょうが・・・
GEORGE CABLESがさすがにいい脇役ぶり、というより主役と同じくらいいいプレイを見せていて、(3年前、広島で見た時(A・シェップ・カルテットで来日)杖をついていて少し元気がない感じがした。)安心した。
4曲目ベーシストATTILLO ZANCHIの作品は、出だしが「スーパースター」に似た美メロナンバーで、哀愁モード満開といったところです。
FEWELLはテクニシャンではないけれども曲の聴かせどころを捕らえるのがとてもうまいギタリスト。
ただ、隅々まで、きっちりと表現してしまう律儀なタイプなようで、もう少し表現の強弱をつけてメリハリを出した方がアルバムとしてはもっと良くなるような気がする。
きっと真面目な人なのだと思う。
メンバーはGARRISON FEWELL(G) GEORGE CABLES(P)ATTILIO ZANCHI(B)GIANNI CAZZOLA(DS)
2002年7月2,3日   MILAN
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BOB BERTLES
昨日、玄関のチャイムがピンポーンとなり、何かなと思って出ると一ヶ月以上前に注文したオーストラリアからの荷物が届いたのでした。
この品物入手までとても苦労したブツでして、メールのやり取りすること10回以上、しっかり英作文の勉強をさせてもらいました。(笑)

なずけて「JAZZ IN AUSTRALIA」

シリーズ第一弾はシドニーで活躍するサックス奏者BOB BERTLESのクインテット作品。
オーストラリアはジャズの拠点がメルボルンとシドニーに分かれていて日本の東京一極集中型とそこが違うところ。
喜びに溢れた演奏というのはこういうのを言うんだろうな。
オーストラリアでも自分の演奏したいジャズだけで生計をたてるのはなかなか大変だろうと思う。このCDからは、彼らの自分達の演りたいジャズをレコーディングできるという喜び、興奮が溢れんばかり伝わってくるのです。
演奏自体とりたてて特徴のあるものではなく、ごく普通の2菅ハードバップなのですがその普通さが良いのです。
普通のジャズをやる気の溢れた輝きのある演奏に聴かせることほど、難しい事はないと思うのです。
新しいことや変わったことを演って、関心を寄せ付けることは、プロのミュージシャンであれば結構誰でもやろうと思えば簡単に出来るのではないかと思うのだけど要はそれが音楽的かどうか、人を感動させることが出来るかどうかなのだと思う。
彼らの信ずるジャズがハードバップスタイルだったと言う事なのでしょう。
BOB BERTLESのサックスはとてもマチュアーで、説得力があり素晴らしいと思う。
是非、日本のジャズファンにも知ってもらいたい。
演奏自体は活気に溢れたハードバップなのは先に述べたけど、オーストラリアのイメージがそうさせるのか、クリーンなのですね。
そこが、50年代黒人ハードバップと違うところ。
メンバーはBOB BERTLES(AS,SS,BS)WARWICK ALDER(TP,FLH)DAVID LEVY(P)
CHRIS QUA(B)RON LEMKE(DS)
録音は1997年7月24,25日 EAST SYDNEY
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RIC HALSTED,EUGENE PAO,EDDIE GOMEZ/CHANGE ENCOUNTERS
「JAZZ IN AUSTRALIA」
はじめから脱線してしまう。
実はこの作品オーストラリアの作品ではなくて、香港録音。
ブツ自体がオーストラリアから届いたってことで大目に見てください。
サックス、アコースティックギター、ベースのトリオ編成。
さしずめ今ならEGEAなんかが録音しそうなフォーマットです。
仕入れてみようという気になったのはEUGENE PAOとEDDIE GOMEZの名前でです。
RIC HALSTEADとEUGENE PAOが1986年香港へ公演で訪れたEDDIE GOMEZにレコーデイングの話をもちかけたことからこのアルバムは生まれた。
RIC HALSTEADはカーブドソプラノを吹くが、マチュアーでパッショネートな音色はヤン・ガルバレグを思い起こす。
2曲目「CAHANCE ENCOUNTER」など、キースの名作「マイソング」の雰囲気そっくりで香港というより北欧の厚く垂れ込めた曇り空や湿った空気感を連想します。
5曲目「KINDRED SPIRITS」は詠嘆長のソプラノサックスに淡くストリングスがかぶさって、EGEAの新作かと思わず間違うほど今の耳で聴いても新鮮に聴こえる音楽が展開されている。
収録時間はわずか37分だけど、とても濃密な音楽的交感が記録された珍しいCDだと思う。
メンバーはRIC HALSTEAD(SS)EUGENE PAO(AC-G)EDDIE GOMEZ(B)
録音は1986年11,12月  HONG KONG
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JOHN STETCH
「GREEN GROVE」でおなじみの人気ピアニストJOHN STETCHが1996年モントリオールとブルックリンで半分づつ録音したピアノトリオ作品。
リリースがオーストラリアからというのが面白い。
そしてこの作品、素晴らしいです。「GREEN GROVE」を上回る作品という人もいるんじゃないでしょうか?
GREENの録音が1999年なので3年前のプレイが収録されていることになるのですね。
ヨーロッパのピアノトリオ?って思うくらい、穏やかで繊細なタッチで演奏される1曲目「THE PRAIRIE UNFOLDS」。
光と陰のコントラストを感じさせる演奏はこういう演奏のことを言うのだと思う。
2曲目はオーストラリアのエメラルドグリーンの海をジェットスキーで滑走するような爽快感溢れるナンバー。
JOHN STETCHのプレイは勿論のこと、ここでは、ドラマーFALK WILLISの素晴らしいドラミングは特筆に価する。
「FOR ALL WE KNOW」,寒くなる今からの時期特に身に染みてくる名曲を、おごそかな雰囲気でプレイ、そう思って聴くとなんだかクリスマスっぽい感じもいたします。
5曲目「MOONGLOW」このアルバムの中でもとびきりの1曲ではないか?
あまりポピュラーではないスタンダードナンバーをこんな具合に新鮮で楽しさ溢れた演奏に仕立てる技量、そこにはオリジナリティーもしっかり組み込まれている。
このトリオの水準の高さを裏付ける1曲だと思う。
ピアノソロで演奏される「PANNONICA」を挟んで後半はドラマーがJEFF BALLARDに交代。
7曲目はやや抽象的なピアノのルパート部分から2分30秒くらいで、JEFF BALLARDがフィルインしてきたあたりから、トリオはエンリコ・ピアレヌンツィの世界に突入する。
しんしんと鳴るバラードのシンバルの音が良いです。
8曲目「SURREY WITH A FRINGE ON TOP」
こういう演奏は好みがわかれるだろうなぁ。
テーマメロディー重視派の方にはあまり好まれないかも知れないけど、アドリブに入ると俄然スイングするので、最後まで聴いてみてください。
9曲目「OUT OF NOWHERE」トリオの一体感、繊細さがでた演奏です。
ラストは淡いランプシェードから漏れる光の様な、温もりのある「EMBRACEABLE YOU」のピアノソロで締められる。
JOHN STETCHの躍動感と静謐感の両面を味わえる素晴らしいピアノトリオです。
メンバーはJOHN STETCHP)JOE MARTIN(B)FALK WILLIS(DS)JEFF BALLARD(DS)
録音は1995年11月21日、1996年1月31日 MONTREAL, BROOKLYN
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BERNIE McGANN
「JAZZ IN AUSTRALIA」第4弾!
オーストラリアサックス界の重鎮、BERNIE McGANNの2000年作品で、サックストリオで演奏されています。
McGANNの作品は本作以外にも数枚このレーベルに録音されているのですがとりあえず最初はこの一枚を仕入れてみました。
昔、10年以上前SJの輸入盤コーナーに紹介されていたのを見た記憶がありますが、実際の演奏を聴いたのは今回が初めてなんですね。
音色はというと、これがサックストリオということもあってそういう思いを喚起させるのか、コニッツの「エモーション」セッションの音色なのですね、これが。
もちろん、ドラムにはエルビンほどの起爆力はなく、こちらの方はMcGANNがリードしているセッションだと思いますが・・・
全作オリジナルで、曲自体どちらかというとアドリブする為のモチーフ的な感じで作られている曲もないとは言えないので、メロディー派のファンの方には正直すこしキツイ作品かも知れない。
しかしですよ、アドリブは切れ味抜群のとてもオリジナリティー溢れたもので、見逃すにはもったいないと思うのです。
全体の感じは先の「エモーション」でのコニッツのプレイをイメージしてもらえば大体分かってもらえるのではないかと思います。
全作オリジナルで通す点からも妥協のない自身の音楽に一徹な人なのが窺い知れる。
作品全体を聴きやすくしようと思えば、何曲かスタンダードとジャズマンオリジナルを入れ込みますよね、普通。
逆に言えば、McGANNのもっとも自由の利くフォーマットで、切れ味のあるファナティックでエモーショナルなアドリブが存分に聴ける作品なのです。
メンバーはBERNIE McGANN(AS)LLOYD AWANTON(B)JOHN POCHEE(DS)
録音は2000年2月22,23日 SYDNEY
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